与条件としての建築メディア
本日のエントリは、番外編です。
本の話です。
7月15日、自分にとっては待ちに待った本が出版されます。
数々の建築家を取り上げている「KJ」の8月号が世に出るのです。
この号から、ある連載がはじまります。
タイトルは「与条件と未条件」。
ざっくりというと、創造系不動産の代表である高橋による、建築の「設計以前の条件」についての連載です。
自分が創造系不動産に参加してから初めて公になるプロジェクトでもあり、学生時代から望んでいた内容に肉薄する連載でもあります。
本が、建築という世界を教えてくれた
僕が建築を知ったのは、ある一冊の本からでした。
手元に残っておらず、タイトルも定かではないのですが、
手塚貴晴さん・由比さん設計のふじようちえんが掲載されており、建築という世界が広がっていることを知りました。
それまで、自分の目に映っていたのはあくまで「建物」であり、そこに美学を感じることはありませんでした。
しかし、その本を手に取った事で、自分は「建築」という世界があることを認識したのです。
与条件としての建築メディア
建築メディアは、その後大学に入ってからも、自分の道標でした。
さまざまなスター建築家を、専門誌を通して知りました。さまざまな世代の建築家について、大規模な学生アイデアコンペの審査内容について、今はなき建築、インテリアの名作について、教えてくれたのは数ある建築の専門誌たちでした。
また、web上にも有名な建築メディアが現れました。それに触れるようになると、建築業界で起こっていることをリアルタイムで知ることができているような感覚をおぼえました。
どのような形にせよ、建築メディアは設計を学んでいる自分にとって、風向きを教えてくれる存在でした。設計に置きかえてみれば、建築メディアは建築学生としての自分の基礎となる「与条件」のような存在だったのかもしれません。
ツール?としての建築メディア
ただし、そうした建築メディアでカバーされていない部分もあるな、と学生のころ感じていたのも事実です。
編集され、整えられた言葉からは、プロジェクトの実際の勘所が見えてこないように思ったのです。
目の前に霧がかかっているような気持ちになったのです。
予算、土地はどのようなプロセスで獲得したのか。クライアント側とのコンセンサスの取り方はどうやったんだろう。名作と言われているが、現在の状態はどうなっているんだろうか。建築家以外の評価はどうなのか。逆に、なぜあの商業空間は、建築の文脈では評価のテーブルにあがらないのだろうか。
以上のことは、クライアントの情報が含まれていることから公にできない部分があったり、建築メディアがとりあげる範囲を逸脱していたりするのかもしれません。
しかし、だからこそ、そうしたことを知りたいなぁ、と思ったのでした。
そうしたことを知ったら、自分が初めて建築という世界を認識したように、建築設計を新たな捉え方で認識し、取り組めるようになると感じています。
メディアが、新たな見方を、獲得するためのツールになりうると思うのです。
前述の連載、「与条件と未条件」は、まさに、そんなツールになりうるものと、自分は考えています。
皆さんが、それを読んでどんな感想を抱くのか、とても楽しみです。
ぜひ、手にとっていただけるといいなぁ、と思っています。
それでは!