「マナー」というプロトコル
「マナー」へのアレルギー
今回は、入社してから感じた「マナー」に関する記事です。
ただし、マナー研修の体験記などではなく、「マナー」を用いる際の意識の仕方について考えたことを書いています。建築とも不動産とも関係ないような話題のようで、仕事のうえで意識しないではいられないことだな、と思います。
「マナー」というワードだけで読む気がなくなる方や、自分には関係のない世界の話だなあ、という感想を持たれる方もいると思います。むしろ、自分もそういう気持ちをもっていた(今も、そういう気持ちがないとは言い切れない)のでわかるのです。
まるでアレルギーのように、「マナー」というものが非常に息苦しいものだと感じてしまう人は、少なくないのではないでしょうか。
今回の記事は、そうしたアレルギーとどう寄り添っていけるか、という話になっています。
人生初のマナー研修
さて、話は半月ほど前にさかのぼります。4月半ばのその日は、自分が創造系不動産に入社して以来の衝撃的な1日でした。
その日自分は、人生で初めてのマナー研修にのぞみました。
マナー研修をご担当いただいたのは、株式会社JECCの方。株式会社JECCは、需要創造系企業への変革支援のためにコンサルティング・研修・出版を行っている歴史ある企業です。
午前9時から午後5時までの8時間、マナー研修はあっという間でしたが濃密な時間でした。自分のふるまいが他者からどのように見えているかを再確認できる貴重な機会だったからです。そしてそれは、自分が挨拶ひとつも満足にできないことに、やっと向き合うことができた機会でもありました。
自分ができていないという現状を認めるのは、自分ひとりでは難しい。具体的な研修の顛末はここでは(とっても恥ずかしいので…)割愛しますが、できないことにしっかり向き合っていこうと思いました…。
コミュニケーションは属人的なものか
いままでは意識することも、指摘されることもありませんでしたが、「マナー」はコミュニケーションの技術といえます。心あっての技術。
しかし自分は、コミュニケーションを能力だと思ってしまう傾向がありました。
そして、そのコミュニケーション能力に不安を抱えていました。現在もその不安感は残っています。そうした不安感の一因は、コミュニケーション能力を非常に属人的なものだと捉えていることかもしれません。
属人的、という言い方は抽象的ですが…容姿や能力・立場など、その人固有の価値によってコミュニケーション能力も左右されると捉えていたわけです。そうした見方にとらわれすぎると、コミュニケーション能力が、自分では変えようのない身を縛るルールのように思えてきます。
行動理論・メタ認知について
以上のように「マナー」という言葉へのアレルギーは、コミュニケーション技術を、あくまで属人的な能力として諦める姿勢からはじまっていたのかもしれません(自分の場合は、なのですが)。
そして、今回のマナー研修では、そういった息苦しさを払拭できるような、コミュニケーションの捉え方のヒントを教えていただけたように思います。
とくに重要だと感じたのは、「行動理論」と「メタ認知」というワード。
コミュニケーションをはじめとして、人が自分自身を変化させるとき、何を変化させるのがもっとも効果が高いとみなさんは考えるでしょうか。自分はぼんやりと、自分自身の「性格」を変えていくしかないよなぁ、と考えていましたが、それは難しいこともわかっています…。
「行動理論」というワードは、ここで登場します。
今回の研修における「行動理論」は、後天的に取得可能な、行動の際の判断基準のことを指します(上のWikipediaが説明している見方にのっとっていますが、より実践的な判断基準をさしています)。
判断の基準を更新・修正していくことが、行動を選択する際の判断の成功確率をあげていくことになる、というわけですね。
そして、行動理論の更新の際に必要なプロセスが「メタ認知」です。
行動にともなう感情や生理的反応は、否定してもわきあがってくるのを抑えることはできないですよね。そうした感情を抑えるのではなく、感情を入り口にして思考を言語化していくプロセスが「メタ認知」です。
何故、自分はこんなにワクワクしているのか。何故、こんなことでカチンときているのか。感情を入り口にして思考の言語化を行っていくんです。そうした客観的な観察を意識することで、判断基準の更新を行っていく、と。
性格を変えるのではなく「行動理論」を更新する。
感情を抑えるのではなく「メタ認知」で観察する。
コミュニケーションの能力は属人的なものでも、後天的に変わっていく手段があるということは非常に魅力的です。人は変わっていくことができる、ということですもんね。
そうした意味で、「行動理論」を更新することに意識的になっていくことは面白いし、希望を持てる。
マナーというプロトコル
そんな見方にたつと、息苦しいルールのように思える「マナー」と寄り添っていくこともできるなぁ、と自分は感じました。「マナー」が単なる規制ではなく、自分を律し、変化させていく道具になりうるということですから。「マナー」が身を縛るルールではなく、コミュニケーションに関わる双方に確実性を保証する、信頼性の高いプロトコルに見えてきます。
研修自体は短かい時間でしたが、「マナー」に対する意識が大きく変化しました。
自分は今、マナーだったり、コミュニケーションに関することを知るのがとても楽しいです。今までだったら手に取らなかったであろう書籍を読んで、下手ながら実践してみています。まったく意識してこなかったことなので、恥ずかしかったり、難しかったりとさまざまな感情が去来しますが…メタ認知を活用しつつ、なんとか。
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※マナー以前の「話の聞き方」の本です。ダメな聞き方の例がことごとく自分に当てはまるのが大変厳しい。
遅々とした歩みですが、変わりはじめているのかな、という感覚があります(まだまだ、ですけれど)。
コミュニケーションにまつわるプロトコル
今回はマナーというプロトコルについての記事でした。
コミュニケーションには様々なプロトコルが存在するような気がするので、ほんの一部ですけれど…創造系不動産は、ある面から見ると、コミュニケーションを仕事の核にしている会社ですから、意識的になり、今回の記事を書いてみた次第です。
今後は、コミュニケーションのなかでも「伝える」ことをとりあげようと思います。「伝える」ためのプロトコルとして のPREP法・ABC法について、です。「伝える」ためのプロトコルが、「思考」にも影響を与える、なんて話も絡めつつ、今回より具体的な方法論をまとめた記事になるかな、と思います。
自分自身もまだ見よう見まねなのですが、やっていく必要と効果を痛感していることをまとめてみますね。
引き続き、やっていきましょう。
それでは!
5月上旬の更新予定
5/3 工学院大学八王子キャンパス新2号館「LC8」体験レポート
5/6 「伝える」ためのプロトコル(PREPとABC)
5/10「東京デザイン・テン」会場レポート・オープニングイベント小話
5/13「芸術と客体性」を読んでみた
このブログについて
はじめまして、
本山哲也ともうします。
不動産コンサルタントをやってます。
いきなりですが、ブログをはじめるにあたって、このブログをどのように「使ってもらいたいか」というところを、自己紹介とかねて説明させていただきますね。
創造系不動産
自分はいま、創造系不動産という会社の不動産仲介部門のメンバーです。
HPにもある通り、創造系不動産は、建築設計の実務を経験してきたプロの集団なんですね。建築設計を経験してきたからこその視点を備えた、不動産コンサルティング会社が創造系不動産なんです。
学生にもっとも近い立場だからこそ
ですが、自分は大学院を修了してすぐ、創造系不動産のメンバーになりました(そうした例は今までなかったということで、かなり実験的な立ち位置におります)。
なので、実務経験は圧倒的に少ない。不動産・建築設計どちらも学んでいく事が多い。建築設計を学んでいる学生にもっとも近い立場にあります。
そうした立場だから意味のあることができないか、ということではじめてみようと思ったのがこのブログです。
このブログを「使って」みてください
創造系不動産は、日々の業務において建築・不動産の両面を兼ね備えた判断が求められる場所です。そうした場所で学んでいることを綴っていこうと思っています。
中でも、特にこのブログを「使って」ほしいのは、 建築設計を「学んでいる・学びはじめた・学ぼうと思っている」学生のみなさんです。
建築・不動産業界で長く働く方々にとっては、自分がこれから記事にしていていくことは当たり前のことなのかもしれないのですが、そうでない人たちも多くいるはず。
プロからしたら当たり前で、あえて言葉にする必要もないようなことを、大学で学んでいたころの自分なら、きっと知りたかったはずなんです。
そういうことで、建築と、その周辺の業界について学んでいる人に「使ってもらえれば」いいなあと思っているんですね。このブログを。
また、ここからはかなり主観的な意見になりますが、
ここ数年とくに目立っている、建築に携わっていくことに不安を持ってしまうような諸々の状況に対して、みなさんが確信を持って自分の進む道を選ぶ(もちろん建築に携わらない、という選択肢もあって自然ですよね)ための指標の役割を、このブログが果たせればいいな、と思っています。
それでは、
毎週水曜と土曜に、昔の自分に手紙をかくような気分で、日々の業務などで得た視点を記事にしていきます。
みなさん何卒よろしくお願いします。